みなさんこんにちは ! ありーなです
ポータブル電源による「節電」を打ち出すメーカーが増えてきましたが、ポータブル電源でどれくらいの電気代が節約できるのでしょうか?ポータブル電源の容量にもよりますが、容量1000Whのポータブル電源で考えます。また、ポータブル電源で元を取るために知っておくとよいポイントも紹介します
目次
電気代節約だけでポタ電購入金額の元を取るのは無理
以前の記事「ポータブル電源の普段使い(家で毎日の生活で使う)」の中で、ポータブル電源を使い電気代を節約する使い方は2つあると紹介しました。
① 太陽光発電で作った無料の電気を充電して使う
② 電気代の安い深夜や早朝にポータブル電源を充電し電気代を節約する
それぞれの方法で節約できる電気代はさほど大きくないことを記事の中で紹介しましたが、今回は「①太陽光発電で作った無料の電気を使う」について深堀します。
「元をとれるの?」という質問に対する答えの結論だけ言うと、「節約できる電気代は大きくないので、ポータブル電源購入金額の元を取るのは無理」となります。
しかし、電気代の値上がりが今後も予想される中、値上がれば値上がるほど節約できる金額は大きくなるのも確かです。
今回は容量1000Whのポータブル電源を使った場合、どれくらいの電気代を削減できるのかを具体的に計算してみます。
東京電力と「従量電灯B契約」を結んでいる家庭が、太陽光発電で作った「無料の電気」を使った場合を想定したシミュレーションです。
電気代が高騰すると、節電できる金額も増えていく
上の図は東京電力の従量電灯B契約の電気料金計算方法を図解したものですが、ポータブル電源を使い電気代を節約する場合、次の中の2つの要素が関係してきます。
① 毎月使う電気の使用量(kWh):青字
② 電気使用量(kWh)に掛け合わせる単価:赤字
(B-1従量料金・B-2燃料費調整額・C再エネ賦課金)
それぞれについて見てみましょう。
① 電気使用量の一部をソーラー発電でまかなえば、電気料金が減る
まず1つ目の要素が「毎月使う電気の使用量(kWh)」です。
電気会社に支払う電気料金は、ひと月の間に使った電気の使用量(Wh)に応じて増減します。
電気使用量を減らすことができればその分電気料金は減りますが、使用量の一部をソーラー発電した電気に置き換えることでも電気料金は減らせます。
これは一軒家の屋根に付けたソーラーパネルと同じイメージですが、残念ながらポータブル電源に溜められる電気の量はそれほど大きくありません。
例えば、容量が1000Wh(=1kWh)のポータブル電源でさえも、ポータブル電源の部類では「大容量」に入ります。
しかし容量1000Whのポータブル電源を1回使い切ったと想定したときに減らせる電気料金は、たったの34円程度(2024年7月時点の試算 月に120kWh~300kWh使う家庭の場合)です。
【容量1000Whのポータブル電源で節約できる電気料金】
東京電力の従量電灯B契約の単価で計算すると、容量1000Whクラスのポータブル電源1回充電分で、2024年7月時点で33.8円/kWh節約できることになります。
従量電灯B | 2024年7月時点※2 |
B-1従量料金 ※1 | @36.4円/kWh |
B-2燃料費調整単価 | @▲6.09円/kWh ※3 |
C再エネ賦課金単価 | @3.49円/kWh※4 |
合計 | 33.8円/kWh |
※2 東京電力は2023年6月1日/2024年4月に料金改定
※3 2024年8月~10月使用分は政府の酷暑乗り切り緊急支援で▲4.0円/kWhの補助があるがその分は考慮していない数字
※4 2024年7月時点の再エネ賦課金単価は2024年5月~2025年4月分まで同額
ただし、ポータブル電源には変換ロスなどがあるため、容量1000Whのポータブル電源で使える電気は容量の80~90%程度です
もし仮に1000Wh分の電気を毎日使いきれたとしても、1000Wh分の電気を毎日ソーラー発電で溜めることは不可能です(ソーラー発電は天気に左右されるため)。そう考えると容量1000Whのポータブル電源で節約できる電気料金は良くて5~600円/月 程ではないでしょうか?
②電気料金の単価が上がれば、ソーラー発電による節電効果は大きくなる
2つ目の要素は「電気使用量(kWh)に掛け合わせる単価」です。
これらの単価の内、B-2燃料費調整額の単価は毎月変動し、C再エネ賦課金の単価は毎年変動します。
またB-1従量料金の単価は、電力会社の料金改訂時に引き上げられることが多く、2023年6月に実施された料金改訂では1kWhあたり9.92円値上げされました。
最近の国際情勢から考えると、すべての単価で今後も引き上げられるリスクが想定されます。
もし単価が引き上げられれば、使っている電気使用量は同じでも電気料金だけが自動的に値上がってしまいます。
もしそうなるならば、ポータブル電源(ソーラー発電)による節電効果は相対的に高まると言えます。
B-1従量料金の単価は1kWhあたり9.92円値上げされたと書きましたが、B-2燃料費調整単価もC再エネ賦課金単価も値上げされています。
【B-2燃料費調整単価の値上げ】
燃料費調整額単価とは、電力会社が発電のために使っている燃料(原油・液化天然ガス(LNG)・石炭)の輸入価格の変動により毎月自動的に決まる単価です。
物価高騰対策として、2023年1月~2024年5月使用分まで政府が補助金(激変緩和措置)を支給しており、家庭の電気代は最大3.5円/kWh安くなっていました。現在は終了しておりその分値上がりしています。
【C再エネ賦課金単価の値上げ】
再生可能エネルギーの普及を促進するため、再エネで発電された電気を電力会社が買い取ることが日本では義務付けられています。再エネ賦課金とはその費用を電気利用者が負担する制度で、国が毎年その単価を決定します。
2023年の単価は@1.4円/kWhでしたが、2024年は@3.49円/kWhと2.09円値上がりしています。
値上げされた2つの単価を合計すると5.59円/kWhになります。ひと月に120kWh~300kWh(東京電力 従量電灯Bの第2段階に相当)の電気を使う家庭での値上げは671円~1,677円/月となります。今後の情勢次第では、電気代の値上げ幅はさらに大きくなっていくのかもしれません
東京電力が2023年6月に行った電気料金改訂により、「規制単価」が撤廃されました。「規制単価」とは、国際情勢の変化によりエネルギー輸入価格が上がった場合でも、使用者が支払う「B-2燃料費調整額単価」に上限が定められていたものです。しかし「規制単価」が撤廃されたことにより、使用者が支払う「B-2燃料費調整額単価」は際限なく上がり続けるリスクをはらんでいます。
参考まで2022年12月までの「B-2燃料費調整額単価」推移のグラフを紹介します。「規制単価」があった時は5.13円を上回って請求されることがありませんでした(オレンジ線)が、今後は「B-2燃料費調整額単価」が値上がれば値上がるほど際限なく請求されてしまいます(黄色の線)
燃料費調整単価に影響のある日本のエネルギー事情については、こちらの記事もご覧ください
1. より多く元を取るためにはソーラー充電能力がポイント
ポータブル電源を購入するならソーラーパネルとセットで購入しなければ意味がありませんが、少しでも多く元を取るためにはソーラー充電能力の高さが重要です。
ソーラー発電で「無料の電気」を「効率的に」作れれば、ポータブル電源を節電目的で使う時に最大の効果を得られます。
ポータブル電源を節電目的で使うなら、「最大ソーラー入力W数の大きさ」と「ソーラー充電時間の短さ」に注目する必要があります。
参考までに、人気メーカー4社の1000Whクラスのポータブル電源のソーラー発電の関連数字を載せていますが、機種により結構違いがあることが分かります。
機種名 | ポータブル電源の容量 | ソーラー充電時間 ※ | ソーラー入力W数(最大) |
Anker Solix C1000 | 1056Wh | 400Wx2枚 80%まで2時間 | 最大600W (11-32V 10A; 32V-60V 12.5A) |
Bluetti AC180 | 1152Wh | 500W 100%まで3時間 | 最大500W (12-60V, 10A) |
EcoFlow DELTA2 | 1024Wh | 400W 100%まで2.5時間 220W 100%まで4.5時間 160W 100%まで6.5時間 110W 100%まで9時間 | 最大500W (11-60V, 最大電流15A) |
Jackery 1000Plus | 1264.64Wh | 800W 100%まで2時間 400W 100%まで4.5時間 200W 100%まで9時間 100W 100%まで18時間 | 最大800W (12-60V, 11A 2ポート電流制限22A) |
ソーラーパネルを何枚も広げられるスペースがあるなら、「入力W数(最大)」ギリギリのソーラーパネルをつなげてソーラー充電できるのが理想です。
しかしソーラーパネルを広げられるスペースは、人それぞれ違います。
自分の家でどれだけのソーラーパネルが広げられるのかを考えて、そのW数のパネルを使えば何時間くらいで満充電できるのかを確認しておきましょう。
例えば容量1000Whのポータブル電源をソーラー充電する場合、出力100Wのソーラーパネル1枚だけではかなりの充電時間が必要になります。節電目的でポータブル電源を使うなら、出力の大きなソーラーパネルを選んだり、パネルの枚数を増やして出力を上げるなど、効率的にソーラー充電できる仕組みづくりが必要です
マンションベランダでのソーラー発電については、こちらの記事もご覧ください
2. ポータブル電源を多目的に使えば、より「元が取れる」
ポータブル電源を普段使いして「電気代節約」のために活用するのも1つの目的ですが、ポータブル電源はそれ以外の目的で使ってこそ持っている意味があります。
とくにポータブル電源とソーラーパネルをセットで購入し、自分で電気を作れるようになっていれば、使い方の幅は広がります。
キャンプやアウトドアのようなレジャーで使えるのは当然として、災害時の停電や計画停電への備え、被災したときの長期の車中泊や野宿生活への活用、普段使いでの電気代節約や家族の大切なものを守ることもできます。
購入したいと思い始めたきっかけは一つかもしれませんが、ポータブル電源はいろいろな場面で使えます。
ポータブル電源をフル活用して多くの場面で使うことができれば、その分だけ「元が取れる」ことにつながります。
ポータブル電源を持つメリットなどについては、こちらの記事もご覧ください
3. 値上がる前に買っておけば、「元を取る」金額は少なくなる
今のところ、ポータブル電源を取り巻く状況はまだ落ち着いているように見えますが、できるだけ早めに買っておくことをおすすめします。
なぜなら今後の情勢次第で、ポータブル電源が品薄になったり、価格が高騰するリスクがあるからです。
まず最初にポータブル電源の需要について考えてみます。
ひとたび何かが起きれば、ポータブル電源の需要は一気に高まります。
【ポータブル電源の需要予測】
・夏に向けてキャンプやアウトドア需要が増える
・ひとたび大きな地震が起きれば、地震など災害に備える人の需要が増える
・大きな台風が来るとなれば、台風に備える人の需要が増える
・電気代が値上がるに従い、電気代を節約したい人の需要が増える
・中東情勢の緊迫が高まるにつれ、電気代高騰や計画停電に備える人の需要が増える
次に供給面の予想です。
国際情勢が不安定な中、海外工場で作られるポータブル電源の供給はリスクにさらされています。
【ポータブル電源の供給予測】
・為替変動や原材料費高騰など、輸入価格高騰に伴うポタ電値上げリスク
・紛争の拡大による物流混乱のリスク(ポタ電値上げと品不足リスク)
これらの需給状況により左右される「日本人のパニック体質」も大きな懸念材料です。
海外の情報が伝わりにくい日本では、世界で起きているリスクに鈍感です。しかしそのリスクが伝わり始めると、ある時点で堰を切ったかのように動き出すのが日本人の特徴です。
もし中東情勢の緊迫が日本人の生活に影響をおよぼしはじめたら。ポータブル電源への注目が一気に高まりだしたら。
その時にはもう手遅れかもしれません。
テレビが伝え始め、周りの人が動き始めたとたん、人々は同じ方向に押し寄せます。そのとき混乱に巻き込まれないためにも、ポータブル電源が必要かどうかの判断はできるだけ早く済ませ、リスクに備えてポータブル電源を購入しておくことをおすすめします。
ポタ電購入が早めが良い件については、こちらの記事もご覧ください
4. 長く使えるポタ電なら、長さに比例して「元を取れる」
最近発売されているポータブル電源の多くは、リン酸鉄リチウムイオン電池を搭載しています。
リン酸鉄リチウムイオン電池は「サイクル数(寿命)」が長いのが一つの特徴で、3000~3500回程度充放電を繰り返しても、使い続けられるほどの水準です。
リン酸鉄リチウムイオン電池機種の多くが「毎日使っても10年使える」と謳っているのは、このサイクル数の多さが根拠となっています。
この技術進歩のおかげで、寿命を気にせずにポータブル電源を毎日使えるようになりました。
ポータブル電源を毎日の「節電目的」にも使えますし、キャンプやアウトドアなどに頻繁に持ち出してもへっちゃらです。
ポータブル電源を長く使えるようになったことで、「元が取れる」可能性が増えたと言えます。
ポータブル電源の性能が向上した件については、こちらの記事もご覧ください
まとめ
ポータブル電源を節電目的で使うことで、ポータブル電源の元が取れるのでは?と考えてしまいますが、「金額面」だけで元を取ることは現実的ではありません。
しかし状況の変化と共にポータブル電源の「価値」は高まり続けており、「価値」を含めたコスパで考えると、回収できる「元」は増やせます。
今後の状況次第では電気料金がさらに高騰したり、ポータブル電源の需給状況が変化するかもしれません。
ソーラー充電能力が高いポータブル電源を早めに購入して、そのポータブル電源をより長期間、多目的に使うことで元が取りやすくなります。
ポータブル電源の金額面だけでなく、総合的な「価値」を考え、早めに購入することをおすすめします。
突然の災害や海外での出来事などをきっかけに需要が一気に増えるポータブル電源は、何も起きていない平時に購入しておくことがおすすめです。
ポータブル電源の価格・価値については、こちらの記事もご覧ください